病理
東大病院病理部の特色
病院病理部と人体病理学・病理診断学講座は,一体となって運営されており、教授(病理部長兼任)1名,准教授(副部長兼任)1名,講師4名,助教7名,医員2名が診断および研修医や大学院生の指導を担当しております。この内8名は日本病理学会から認定を受けた病理専門医です。このように層が厚く,また各臓器の病理専門家を擁しております。
病理部では東大病院の全ての組織検体(年間約13,000件),細胞検体(同約18,000件)の診断および剖検(同80-100例)を行っています。多彩な疾患を扱っておりますが,その多くはがんまたはそれを疑う病変が対象となります。大学病院という性格から,頻度の高いものから比較的稀なものまで非常に幅広い種類のがんの検体が集まっており,多彩ながんの病理診断を経験できるのが特徴です。
病院内で行われている14分野のCancer Boardすべてに,担当の専門病理医が参加しており,病理所見の提示やコメントを行っています。このような科を越えた症例検討会は,臨床と病理学的所見をつなぎ,病院全体のがん治療に貢献するという側面以外にも,疾患や病態の解明についての学問的な情報交換の場としての意義も少なくありません。これは,高度医療を担った大学病院ならではの特長です。
病理がんプロフェッショナル養成プラン・インテンシブコース
病理では,まさにがんの実像に触れられることが,他の検査や画像と異なる大きな特徴です。病理診断=顕微鏡診断と思われている方もいらっしゃるかもしれません。実際には,そのようなミクロ的(顕微鏡)観察だけではなく,その前のマクロ(肉眼)的観察から病理学的検索は始まり,画像や検査データなどの臨床情報も踏まえた上で総合的に為されるのが病理診断です。
採取された組織検体については,まず詳細な肉眼観察で病変の性状や広がりなどを把握し記録します。次に,それを踏まえて顕微鏡観察すべき部位を適切に切り出し,組織プレパラート標本を作製します。肉眼観察-切り出し-顕微鏡観察-総合的評価→最終診断というプロセスは,それぞれが大切であり,経験と論理的な思考の裏づけに根ざしたものです。
病理研修では,経験豊富な指導医が全ての診断の下書きをチェックし直接に指導します。病理部では人に教えるのが好きな病理医が多く,将来病理を専門にする,しないに関係なく,日々親身の指導やディスカッションが行われております。
病理部門では,がんで亡くなった方の病理解剖(剖検)も行っています。剖検とは,死因の究明,病態の理解を目的に行われる死体解剖のことであり,がんの患部だけでなく,そのがんによって,体全体にどのような変化が生じていたか,がんがどの程度広がっていたかなどをマクロ,ミクロの視点から検索します。がん診療も専門性が高まり,それにより高度な医療を提供できる利点はありますが,一方で「木を見て森を見ず」といった,狭い視野に陥りかねない危険性も潜んでいます。剖検検索に携わることは,がんとそれによってその患者さんの体に引き起こされていた病態を総合的に理解するまたとない機会となっています。剖検で見出された所見は「病理解剖報告書」として文書にまとめられ,また,臨床病理カンファレンスを通して担当した医師だけでなく,他の医師にも知らされ,治療の妥当性が検証されるとともに,「次の患者」のために情報が共有されています。
がんのプロを目指す方々が,このような病理診断を自ら体験する意義は,がん組織を実際に見て詳細に観察し病態について総合的に考えるというプロセスを繰り返すことで,がんをより具体的に理解することができるようになるということです。
希望に応じて,剖検見学から剖検報告書作成,剖検報告会での発表や,受け持った症例については各種臨床病理カンファレンスでの症例提示なども経験して頂く事も可能です。また、臨床科の先生方との病理検体などを用いた共同研究も積極的に進めておりますので,日々の病理診断の実践から新しい研究テーマや問題意識を見出していただくことも可能であると思います。
心おきなく病理研修を
東大病理では,病理を学びたいと考えている,あらゆる医師・医療関係者に対して広く門戸を開いています。我々も、がん専門家を目指す多くの医師・医療関係者とのインターラクションを通じて、よりよいがん治療をともに生み出し育てていきたいと願っております。
がん専門家を目指す臨床の先生方、知識や経験の幅を広げてさらによりよい医療を行っていきたいと望まれる多くの方々の御参加を心よりお待ち申し上げております。 専門分野、時間配分などに関する希望に対応して、適宜、最適の研修プログラムを組むことが可能です。