がんプロフェッショナル養成プラン

 周知の通り、1981年に脳血管疾患に代わってがんが日本人の死因の第1位になり、それ以降連続して死因トップの座を維持しています。これは心疾患や脳血管疾患による死者が減少したことによる相対的な1位ではなく、一貫して死亡数が増加してきた結果の1位です。
 我が国では従来より診療科単位でがん医療を行ってきており、そのトップの治療成績は世界のトップグループを形成している領域が少なくありません。また、がんの基礎研究においても世界的な評価を得た業績を数多く発表しています。このような高い医学水準を達成しているにもかかわらず、現実のがん医療に対する評価は必ずしも好意的なものばかりではありません。「がん難民」という言葉に象徴されるように、日本中どこでも同じ水準の治療が受けられるようにという国民の要望には応えられないでいるのが実情です。その原因としてあげられているのは、診療科の枠組みを超えて連携する横断的ながん医療の不在、地域間のがん医療水準の格差、地域間の情報格差、そしてマンパワーの不足した不十分な医療体制などがあります。特に前2者は、がん医療の質の向上を目指す上で医療者自身が解決すべき急務の課題となっています。
 今回文部科学省が、質の高いがん専門医等を養成し得る内容を有する優れたプログラムに対し財政支援を行う「がんプロフェッショナル養成プラン」事業を募集し、これに対して東京大学・横浜市立大学・東邦大学・日本大学の4大学は共同事業「横断的ながん医療の人材育成と均てん化推進」を立案・申請し選定されました。以下に私たちの取り組みをご紹介いたします。

プランの概要と特色

 本プランは、東京大学を代表として横浜市立大学、東邦大学、日本大学が共同して行う、がんの集学的治療、特に横断的な化学療法と放射線治療の指導的人材を育成する取組です。その育成の対象は医師だけでなく、チーム医療を専門的立場で構成するコメディカルの養成も含んでいます。

 東京大学、横浜市立大学、東邦大学、日本大学の執行部によって組織されるプログラム推進委員会の管理下に、各大学医学系研究科と大学附属病院が中核となってプランを推進します。チーム医療を主体とした実地修練は、研究科長が指名する各大学のがん治療教育コーディネーターが担当し修練の質の向上に努めます。学位取得のための研究とがん医学に関する授業には各大学の医学系研究科の全ての専攻が参加し、各大学の研究科委員会と各専攻会議が管理します。

 参加する4大学は月に1回、合同で癌治療に関するセミナーを開催し、各がん診療領域における治療方針について、標準的治療の推進と先端的治療の検討を行います。また、4大学だけでなく、その連携施設の協力も得て希望領域の研修が網羅できるようプランを策定します。

横浜市立大学の取組を紹介するページ
東邦大学の取組を紹介するページ

養成コース

 本プランには、専門領域だけでなく臨床腫瘍学・放射線治療・緩和ケアなどの横断的な研修を行いつつがんの基礎研究に従事する学位取得コース、実務経験を有する看護師・薬剤師・放射線技師などを対象にチーム医療への参加を通してがん医療に必要な知識と経験を習得させるコメディカル養成コース、既に専門領域のがん診療に従事している医師を対象に診療経験の不十分な領域の研修機会を与えるインテンシブコースの3つのコースを用意しています。各コースの詳細は、該当するページをご覧下さい。

お問い合わせ

東京大学がんプロフェッショナル養成プランについて関心のある方は、以下の窓口までお気軽にお問い合わせ下さい。

〒113-8655
東京都文京区本郷7-3-1
東京大学腫瘍外科
山口 博紀
メールでのお問い合わせはこちらLinkIcon