がん医療に携わる専門医師養成コース(学位取得コース)

コースの概略

 本コースは、高い臨床能力と研究能力を併せ持った腫瘍専門医を養成することを目的としており、大学院博士課程4年間の間にがん臨床とがん研究を学んでいただきます。
 東大病院のがん治療方針決定機関であるキャンサーボードの指導下で、診療科の枠を超えたがんの横断的臨床研修を行っていただき、さらに国際的に高く評価されているがん研究の指導者の下で学位を取得していただきます。


 高度な知識と技術を持ち、がんを横断的・集学的に診療できる専門医師として、日本のがん医療を担っていただくことを目指します。

出願資格

初期研修を終了した方を対象とします。
(1)卒後臨床研修制度における2年間の必修初期研修を修了した方
(2)平成15年以前に卒業し、2年間の初期研修を修了した方
(3)外科系では所属学会の認定医または専門医を取得した方(取得見込みの方も可)

教育課程

 研修の当初6ヶ月間は腫瘍内科、腫瘍外科、放射線治療、緩和ケアの病棟におけるチーム医療に参加することによって、がんの集学的治療に必要な最低限の臨床能力を習得していただきます。これに加えて、臨床腫瘍学、放射線治療、緩和ケア、病理のいずれかの専門領域の研修に6ヶ月以上専念していただきます。研修は大学病院の他に、希望に応じて、がん診療連携拠点病院を中心とする連携病院で行います。その後、指導教員の下で最低2年間がん研究に従事するとともに、医学共通科目でがん医療に必要な広い知識を習得していただきます。


 複数領域のがん診療に従事していただくと共に、学会発表、論文発表を行っていただき、講義で幅広い知識を習得して、がん薬物療法専門医等の資格取得も目指していただきます。





臨床腫瘍学

 臨床腫瘍研修コースでは、診療科の枠を越えたがんの横断的臨床研修を行い、がん診療の指導的人材を育成することを目指しています。カリキュラムとして腫瘍内科、腫瘍外科、放射線治療、緩和ケアの合計6ヶ月の臨床研修によりがんのチーム医療に参加し、臨床腫瘍専門医として必要な薬物療法および支持療法の基本、基本的外科手技、放射線治療計画や緩和ケア診療の臨床能力の習得を目標とします。

 さらに6ヶ月以上化学療法を主体とするがん診療研修を行うことによって、薬物療法を中心とするがん治療の科学的根拠や臨床研究について深く学びます。研修は大学病院のほかに連携病院での実習も領域に応じて可能です。また希望に応じて病理などのがん治療に関係する領域の選択も可能です。「がん薬物療法専門医」等の取得に必要な研修を行うとともに、わが国のがん診療均てん化とトランスレーショナルリサーチの発展を牽引する人材育成を目指します。

放射線治療

 放射線治療研修の当初6ヶ月間では、放射線治療、腫瘍内科、腫瘍外科、緩和ケアの病棟におけるチーム医療に参加することによって、がんの集学的治療に必要な最低限の臨床能力を習得していただきます。

 その後、放射線治療主体の研修に6ヶ月以上専念し、実習期間中に、各種疾患・病態における放射線治療の適応判断および一般的な放射線治療診療に習熟することを目的といたします。

詳しくはこちらLinkIcon


緩和ケア

 緩和・終末期医療研修では、緩和・終末期医療を必要とする患者とその家族に対し、全人的に対応するためのプログラムが組まれています。各研修場面の診療・関わりを通して、「心理社会的側面への配慮」「基本的な緩和ケアスキルの習得」「告知をめぐる諸問題への配慮」の3つが到達目標となります。これらを達成するには、緩和ケアにおける基本的なコミュニケーション・スキルの習得が必要となります。緩和ケア診療部では多くの診療科スタッフとの交流や患者とその家族との関わりをとおして、緩和・終末期医療における適切なコミュニケーション ・スキルを体系化してきました。緩和・終末期医療の現場では、患者とその家族に「悪い知らせ(Bad News)」を伝えなければなりません。「悪い知らせ」とは、癌の全身転移、進行、予後についての正確な情報を伝えることであり、臨床医にとって非常に困難でストレスの多い仕事のひとつです。臨床医は、「悪い知らせ」と「患者の希望や期待」のバランスを考慮する一方で、期待された治療効果が得られなかった際、患者とそのご家族の絶望感と悲嘆に対処する必要があります。これらの現場での課題を受けて、緩和ケア診療部では、MD Anderson Cancer CenterのDr. Baileとトロント大学のDr.Buckmanが開発した「悪い知らせを伝えるとき」 に焦点を当てたコミュニケーション・スキルのマニュアル(SPIKES)を導入し、 さらに、わが国の文化的な背景を考慮してmodifyしてきました。

 厚生労働省は医師臨床研修制度における指導ガイドラインのなかで、緩和・終末期医療においては、次のような研修目標を掲げています。
1.心理社会的側面への配慮ができる。
2.基本的な緩和ケア(WHO方式がん疼痛治療法を含む)ができる。
3.死生観・宗教観などへの配慮ができる。
4.告知をめぐる諸問題への配慮ができる。

 緩和ケア診療部では、SPIKESをグランド・セオリーとして、最低この4つの目標を達成できるように指導しています。緩和ケア研修の前半6ヶ月間では、腫瘍内科、腫瘍外科、放射線治療の病棟におけるチーム医療に参加することにより、がんの集学的治療に必要な最低限の臨床能力を習得していただきます。その後、緩和ケアチームの研修後半に6ヶ月以上専念し、実習期間中に、
1.心理社会的側面への配慮 
2.基本的 な緩和ケアスキルの習得 
3.死生観・宗教観などへの配慮 
4.告知をめぐる諸問題
への配慮を学んでいただきます。

詳しくはこちらLinkIcon


病理

 病理では,患部から採取された組織について,肉眼と顕微鏡で詳細に観察し病理診断を下しています。病理診断には,それが腫瘍か否かというだけでなく,腫瘍であった場合は,良悪性の診断,その種類や組織型,悪性度に関する情報なども含まれます。そして,臨床担当医はこれらの病理診断情報を基に治療方針を決定しています。さらに,外科手術や内視鏡的切除などで採られた検体に対しては,術前診断の再評価,がんの進行度や手術によってがんが充分に採り切れたか,さらには予後に関する因子の評価などを行い,これらの情報はその後の治療方針の決定にも役立っています。

 このように,病理診断はがん医療の根幹で極めて重要な役割を担っており,がん医療のプロフェッショナルを目指すがんプロフェッショナル養成プランの大学院生の皆様には,是非,その実際を体験して頂きたいと考えています。また,がんの病理学研究,がんの分子機構の解明を目指す大学院生を積極的に受け入れ,共にがん研究を推進していきたいと考えております。

詳しくはこちらLinkIcon